ぼかのーと #14 Mei Mei [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 はいどーも、竹輪です。

 今回はピノキオピー作、2018年公開のミク曲、「Mei Mei」について語っていきたいと思います。

 この曲は「ナツキタ2018 北海道フェア」のテーマソングとして作られました。

あ~ まじやばい 最高
空気澄んでる ご飯がおいしい
あ~ まじやばい 最高
みんな大好き こづかい頂戴
うっせえ うっせえ 一線越えて
ほんと 地球 超尊敬

 これは1番の最初の部分の歌詞です。歌ってることはまるで語彙力を失ったTwitter民みたいですが、非常に人間味に溢れていて魅力的です。何気にお金をせがんていたりと、飾らないことに親しみが持てます。

 この歌詞だけを見て北海道だなぁと思うひとはほとんど居ないでしょう。でもあえて言うなら、多分北海道の雄大な自然とか、融和的で大らかな道民性が表されているのかと思います。

 この曲は終始こんなノリで進むんですけど、時には語彙力をドブに捨てたかのような軽いノリだからこそ伝わってくるものがあります。

楽しいこと くだらないことだけじゃ
腹は膨れないけど
優しい時間 君といる時間だけが
ずっと続けばいいのにな

 これは歌の終わりの歌詞です。軽快で中毒性の高いメロディに合わせてこの手の歌詞を入れるのは、エモーショナルとは少し違う気がしますが、胸を締め付けられるような感覚になります。程よい切なさがこの曲の明るさに混じってまじやばいです。

 「優しい時間 君といる時間だけが ずっと続けばいいのにな」という小市民的な結論が置かれているのは何とも人間らしくて好きです。自分の周りの小さな幸せを享受したいと思うのは、大多数のひとに当てはまることじゃないでしょうか。この安っぽい感じがたまらないのです。

 最後に、この曲で私が1番感銘を受けた歌詞を紹介します。

音楽 あんまわかんねえや
音楽 あんまわかんねえし
音楽 あんまわかんねえけど
寿司くらい好き

 私は今まさに曲の感想を書いているわけですが、正直なところ音楽なんてあんまわかりません。ピノキオピーとミクさんですら「あんまわかんねえ」とうたっているのに、私にわかるわけないです。

 それでも曲の感想を書いているのは、その「好き」を伝えたいからです。あまり上手く書けている自信はありませんが、曲に対する「好き」の気持ちを再確認する上でも有用なことだと思っています。

 そして、少なくとも私は寿司が好きですし、音楽は寿司くらい好きです。これは自信を持って言えます。そんなわけで、私は小難しいことを言おうとして失敗したりしながら「好き」を伝えようとしているわけですが、この曲ではもっとストレートな言葉で「好き」を伝えているのです。ですから、私もこんな風に言えたら良いな、という羨望すら抱きます。だからこそ、ここの歌詞が最高にぶっ刺さりました。

ぼかのーと #13 このつまらない日々が素晴らしい [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 はいどーも、竹輪です。

 今回は初音ミク11周年に合わせて、ぼかのーとを書かせていただきました。今回題材とするのは「このつまらない日々が素晴らしい」です。後に「はやくそれになりたい!」で一躍人気となるキノシタ氏が、2016年に投稿した曲です。

 そんなこの曲、まずイントロがかなり刺さります。最初の明るさに少しかっこいい感じを織り交ぜた雰囲気がミクの「ひぃ ふぅ みぃ よぉ」で変化し、可愛さと明るさを全面に押し出した曲調となります。劇的な変化というよりは、AメロがBメロになった、ぐらいの変化ではあるのですが、楽しいです。ノれます。素晴らしいです。

 基本的に歌詞は意味が通る程度にノリを重視してます。個人的に好きなのはAメロの「意味なくなくなくない?ない!」のところで、メロディにハマってるのが気持ちいいです。サビの「LOVEずっきゅんの気持ち」とかは、かなりテンションで生きてる感じがして良いです。また、歌詞に合わせてころころと表情を変化させるミクさんのイラストが可愛いです。

 そして、この曲、明るいんですけど、底抜けに明るい、という訳では無いんですよね。同じ作者の作品である「はやくそれになりたい!」や「ミクミクミクミクミ」と比べてもらえば分かりますが、この曲のミクさんには何となく闇があるような気がします。

 恐らくですが、このミクさん、自分の世界にはミクさん本人とマスター的な存在しか居ないんですよね。だから「これ以上望むことなんてないわ あなたが歌を聴いてくれるから」となるわけです。「マスターと歌をつくってみんなに聴いてもらう」とはならないんです。彼女の世界には「私」とマスター以外のひとは居ないんですから。我々視聴者がいくらこの曲を聴いても、ミクさんにとっては関係の無い話なんですよね。

 そうである以上、ミクさんはマスターに飽きられた時点でおしまいです。だから、「このつまらない日々が素晴らしい」のです。歌われている通り、刺激の多い日々をマスターが送ると、その分ミクさんにかける時間は減ってしまいますからね。やがて飽きられてしまうかもしれません。そうしたら…。

 というわけで、かわいくて勢いがあり、ちょっぴりブラックな曲です。

ぼかのーと #12 初体験 [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 はいどーも。竹輪です。

 今回題材にする曲は、ナナホシ管弦楽団氏の「初体験」です。この曲は2015年、ニコニコ動画鋼兵氏の「なぜボーカロイドは衰退したのか」という動画が話題となった際に、そのアンサーソングとして作られました。

 その衰退論の動画について、もしかしたら知らない方も居らっしゃるかもしれません。ですから手短に説明しますと、キャラクター性の喪失と急激すぎた界隈の発展、商業化の結果、ボーカロイド(厳密にはニコ動ボカロ界隈)が「衰退した」とする内容でした。

 そしてこの曲はそんな論調への反論の意味を込めて制作されました。

時が進んで ガラクタだって言われるようになったって
私を勝手に終わらせないで!

 この曲の中で私が1番好きな歌詞がこの部分です。「私を勝手に終わらせないで!」の「で」の音は「ぜ」とも聞き取れるような調教をされています。つまり衰退論に対する抗議であるとともに、決意のあらわれでもあります。

波が寄せて返しまた寄せる日が
明日じゃないなどと誰が言い切れよう?
バイバイ・センセーション?(ソンナワケナイジャーン)

 この歌詞中で括弧内の台詞を言っているのは初音ミクです。この言い方は少々不適切かもしれませんが、2007年の発売以降、初音ミクは常にボカロ界隈の中心的な存在でした。この曲が投稿された2015年には初音ミクはまさしく「幾つもの荒波を越えてきたベテラン」です。そんな彼女だからこそ流行の終焉を否定し得るし、そこに説得力や希望を生み出せるのだと思います。

 衰退論というバックグラウンドを抜きにしても、この曲は魅力に溢れています。ナナホシさんの得意なギターはイントロの時点でかなり活躍しています。かっこいいです。特に2番のBメロの後の間奏のギターソロが最高に熱いです。

 また、ボカロを5人も起用しているだけあって、ハモりはかなり明確に聴きとることができます。このハモりはロックな曲調と絶妙にマッチし、独特の雰囲気を演出しています。

 それから、私が特に好きな部分を上げるとするならば、サビの「生まれて初めての歌だよ」のところです。メロディラインにどことなく哀愁を感じられて素晴らしいです。ちょうどこの所の歌詞が間接的なタイトル回収となっているのも最高にエモいです。

 今、聴き返してみると改めて何か思うところもあるかもしれません。あるいは衰退論を抜きに聴いてみるのも違った魅力を味わえるでしょう。

ぼかのーと #11 アスノヨゾラ哨戒班 [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 こんにちはー。竹輪です。

 今回題材とする曲は、(皆さんご存知の)Orangestar氏が2014年に投稿したIA曲、「アスノヨゾラ哨戒班」です。この曲は2015年にはミリオンを達成するなど、幅広い人気を得ています。ちなみに、どうでもいい話だとは思いますが、私が投稿時点でミリオン達成済みの曲をぼかのーとで扱うのはこれが初めてです。

 この曲のベースは、同じコード進行(F♯m | D | E | A E/G♯)をほぼ同じ形で繰り返し続けています。ここで使われているのはかの有名な「小室進行」です。ボカロ曲では多用されている(千本桜ゴーストルール等)ので馴染み深いかも知れません。曲の入りでは音数が非常に少ないので、かなりこのコードは印象的です。

 メロディは同じ流れが2回やってこないため、全体的にシンプルな曲調ではありますが、冗長さを感じることがありません。それから、盛り上がった高音の伸ばしの部分はとても綺麗で、曲にぴったりです。

 この曲は、使われている音数はあまり多くないですが、前述の通り1つ1つが強力です。詳しいひとがいたらツッコまれてしまうかも知れませんが、この曲が流行った要因には、もしかしたら、少ない音数で勝負するのが、動画投稿時の少し前の時期に流行っていた曲調と比較して新鮮だった、なんてのもあるかもしれません。

 この曲には幾つか、流行した派生作品があります。ニコニコで神話入り(1000万再生)を達成したウォルピスカーター氏の歌ってみたの他にも、セルフカバーである「キミノヨゾラ哨戒班」、エンディングに本曲を採用したメドレー「ニコニコ動画摩天楼」、Twitterで一時期話題となった「公式歌い手」の音源を使った合唱動画声優の佐倉綾音(あやねる)氏のカバーなどがあります。

 こういった派生作品を視聴すれば本家を益々楽しめるのもこの曲の特徴です。「キミノヨゾラ哨戒班」と比較しながら聴いてみたりすると双方の魅力をより感じることができますし、公式歌い手の動画を観てから本家を聴けばきっと本家の素晴らしさに感動すら覚えることでしょう。

おすすめVOICEROID実況5選

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 はいどーも、竹輪です。

 今回はおすすめVOICEROID実況5選と題しまして、好きなボイロ実況を紹介していきます。

※ゲームタイトルのクリックで公式サイトかSteamのストアに飛びます。

〇きりたんが荒野を征く(Ponsh 様)

 最初におすすめさせて頂くのはこちらです。このシリーズは文明崩壊後の世界を舞台としたオープンワールドRPGである、「kenshi」を実況したものです。この動画シリーズをきっかけに、ニコニコ動画での知名度が急上昇し、多くのボイロ実況者が実況をはじめました。

 丁寧な編集と、ゲームの独特の世界観とうまくマッチした、落ち着いた雰囲気が魅力の動画です。

Part1はこちらからどうぞ。

〇朝食はパンに限る(豚野郎 様)

 パンを操作して移動させてトーストとして焼き上がることを目指すアクションゲーム、「I am Bread」の実況シリーズです。パンの操作主として結月ゆかり、ツッコミ役として弦巻マキとゆっくりが使用されています。

 ゲームのシュールな雰囲気とうまく混ざったテンポ感のある会話と、ステージのギミックを無視して進む大胆さ、高いパン操作技術が伺えるプレイなどがとても魅力的です。

Part1はこちらからどうぞ。

〇言うこと聞かないゆっくり&ゆかり実況:The Stanley Parable(妙楽 様)

 このシリーズは大企業の従業員であるStanley氏をナレーターの指示に従ったり従わなかったりしながら操作するゲーム「The Stanley Parable」のゆっくり&ゆかり実況です。ゲームの性質上動画には多分にネタバレが含まれるので注意です。

 ゆっくり魔理沙とねじ曲がった性格のゆかりが繰り広げる会話の掛け合いが面白いシリーズです。

 作者の方は他にも実況シリーズをいくつかあげていて、このシリーズと同じ世界観を持つ実況シリーズ群は「妙楽キチロイドシリーズ」と呼ばれています。この動画群の中で登場するVOICEROIDは性格や性質がどこか歪んでいて闇を抱えているので、視聴にはある程度人を選びます。しかし、この動画のような魔理沙とゆかりの組み合わせは相対的に安心して観ることが出来ます。

Part1はこちらからどうぞ。

〇持続可能な帝国(古坂こま 様)

 このシリーズは第二次世界大戦をモデルとした戦略シミュレーションゲームHearts of Iron IV」を元に、オリジナルのストーリーを沢山追加した動画です。

 史実の大戦とは異なり、4人の「不死身となった紲星あかり」が二次大戦の主要国でそれぞれ政治や戦争をすすめていくという設定で、それぞれの性格や思想を背景とした濃密なストーリーが展開されていきます。

Part1はこちらからどうぞ。

〇ほのぼのダンジョン攻略記(肩昆布 様)

 最後におすすめさせて頂くのはこのシリーズ、大人気のサンドボックス型ゲーム「Minecraft」のMODで生成されるダンジョンを攻略することを目標にした動画です。

 VOICEROIDやCeVIOだけでなく、VOCALOIDである初音ミクを実況に使用していて、ボカロファンや、ゆかミク推しの人にとってはとても貴重な動画です。スライム化した茜ちゃんの「セヤナー」(カバー画像のキャラクターです)が生まれたのもこのシリーズとなります。

 半ば混沌と化したネタの応酬が観ていてとても楽しい動画です。

Part1はこちらからどうぞ。

 以上です。どの動画もとても面白いので、興味があれば是非。

ぼかのーと #9 ぼくらのディメンション [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 どうもこんにちは、竹輪です。

 今回題材とする曲は、「ぼくらのディメンション」です。2016年にカルロス袴田氏によって投稿された、初音ミクと音街ウナの曲です。

 この曲の特徴として、ツインボーカルであること存分に活かされている点が挙げられます。ウナは、グロウルが入ってたり「効率主義(くぉうりつしゅぎ)」のような独特の発音をしたり、ハモり(というよりはもはや叫び)がかなりうるさいなど、かなりクセのある歌い方にされています。一方ミクは、それらが抑え目になっています。これは動画内でのキャラ付けにも影響していて、間奏でみられる会話の部分ではミクがおっさん、ウナが若者といったような立場をとっています。この対称性は、ツインボーカルの魅力を際立たせていると言えるでしょう。

 そして、この対称性には面白い点があります。歌において視聴者を置き去りにしているのは確実にウナです。ミクの方が「まともに歌っている」感があります。ですが、文字での会話(漫才)においては立場が逆転していて、基本的にはミクがボケで視聴者を置き去りにし、ウナがそれに冷静にツッコむという風に進められていきます。我々視聴者はミクとウナの両方に「面白さと親近感」を感じることができます。何故なら、突拍子のないものには面白さを、自分と近いものには親近感を抱くというのはごくごく自然な考えと言えますからね。これがこの曲の魅力に繋がっているのではないでしょうか。

 さらに、この曲の全体を通して言えるのが、メロディが非常にエモいということです。特にそれを感じられるのが、サビのボーカルのロングトーンとメロディがハモっている部分で、励まされるような歌詞も相まって本気で泣かせにきてます。

僕らはいつでもここにいるよ
誰も優しくしてくれないなら
ここがキミの味方だ!!でしょ?でしょ?

 これは動画内でミクとウナの両方に親近感を感じられるようなキャラ付けがされているからこそ説得力があり、安心感を生み出しています。安心出来るところじゃないと、日常の疲れに対する涙は出てきませんから。

 ツインボーカルが存分に活かされた、親しみを感じられるような曲です。

ぼかのーと #8 世界を壊している [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 おはこんばんちは、竹輪です。

 今回題材とする曲は、「世界を壊している」です。Neru氏が2015年に投稿した鏡音リンオリジナル曲です。

 作者のNeruさんが投稿者コメントで「ロックバンドジャズ」であると言っているように、この曲にはジャズ的な要素が多く含まれています。そのうちの1つが、曲の最初や間奏で出てくるトランペットなどのブラス(金管楽器)主体のフレーズです。この部分、最初に出てくるだけあってインパクトは抜群で、そしてなにより、ひたすらにかっこいいです。

 この曲の中でも特に私が好きなのは、Cメロの部分です。歌詞の内容としては、起承転結の「転」の部分にあたり、高音から入るボーカルのメロディと、キレのあるブラスの音がマッチして、とても心に刺さります。

 続いて、この曲の歌詞を見ていきましょう。

 これは、1番のサビにあたる部分の歌詞です。

何者にもなれない事が許せなくて
冴えない未来というハンマーを 千鳥足で振るっている
胸のサイレンさえ打ち砕いて
「もういっそこんな人生なんて」って僕は
世界を壊している

 そして、これがラスサビの歌詞です。

何者にもなれない事くらい知っていたさ
結局は単純明快で 僕が全部悪いんでした
ならばもう一生独りだって
「不器用な愛を振り撒いてやる」って僕は
「もういっそこんな人生だから」って僕は
世界を壊している

 この両者を比較してみると、この曲のタイトルでもある「世界を壊している」の意味合いが少し変わってきているのがわかります。1番においては、恐らく、「世界を壊している」のは意図的ではないでしょう。「何者にもなれない」ことが結果として「世界を壊している」のです。そこに本人の意思が絡む余地はありません。そしてそのことを自嘲的に歌っているにすぎないです。

 しかし、ラスサビにおいては、明らかに「世界を壊している」ことを選択しています。「結局は単純明快で 僕が全部悪いんでした」という歌詞から、半ば開き直りであることが伺えますが、それでも、「何者にもなれない」ことを、なんとか受け入れることに成功しています。その上で、自分なりの生き方として「世界を壊している」のです。この変化はとても重要です。

 ちなみにラスサビ前の歌詞では「何もかもを 放した今」とあります。恐らく、何も持たないという「強さ」を手に入れることで、何とか生き抜こうとしているのでしょう。それを選択させる都会という環境の残酷さを感じることができます。

 総評としては、都会的な暗さと、ジャズの要素が上手くマッチした曲です。