ぼかのーと #12 初体験 [感想]

※本記事は2020年11月にnoteから移設したものです。投稿日時は元記事の投稿日時に合わせてあります。

 はいどーも。竹輪です。

 今回題材にする曲は、ナナホシ管弦楽団氏の「初体験」です。この曲は2015年、ニコニコ動画鋼兵氏の「なぜボーカロイドは衰退したのか」という動画が話題となった際に、そのアンサーソングとして作られました。

 その衰退論の動画について、もしかしたら知らない方も居らっしゃるかもしれません。ですから手短に説明しますと、キャラクター性の喪失と急激すぎた界隈の発展、商業化の結果、ボーカロイド(厳密にはニコ動ボカロ界隈)が「衰退した」とする内容でした。

 そしてこの曲はそんな論調への反論の意味を込めて制作されました。

時が進んで ガラクタだって言われるようになったって
私を勝手に終わらせないで!

 この曲の中で私が1番好きな歌詞がこの部分です。「私を勝手に終わらせないで!」の「で」の音は「ぜ」とも聞き取れるような調教をされています。つまり衰退論に対する抗議であるとともに、決意のあらわれでもあります。

波が寄せて返しまた寄せる日が
明日じゃないなどと誰が言い切れよう?
バイバイ・センセーション?(ソンナワケナイジャーン)

 この歌詞中で括弧内の台詞を言っているのは初音ミクです。この言い方は少々不適切かもしれませんが、2007年の発売以降、初音ミクは常にボカロ界隈の中心的な存在でした。この曲が投稿された2015年には初音ミクはまさしく「幾つもの荒波を越えてきたベテラン」です。そんな彼女だからこそ流行の終焉を否定し得るし、そこに説得力や希望を生み出せるのだと思います。

 衰退論というバックグラウンドを抜きにしても、この曲は魅力に溢れています。ナナホシさんの得意なギターはイントロの時点でかなり活躍しています。かっこいいです。特に2番のBメロの後の間奏のギターソロが最高に熱いです。

 また、ボカロを5人も起用しているだけあって、ハモりはかなり明確に聴きとることができます。このハモりはロックな曲調と絶妙にマッチし、独特の雰囲気を演出しています。

 それから、私が特に好きな部分を上げるとするならば、サビの「生まれて初めての歌だよ」のところです。メロディラインにどことなく哀愁を感じられて素晴らしいです。ちょうどこの所の歌詞が間接的なタイトル回収となっているのも最高にエモいです。

 今、聴き返してみると改めて何か思うところもあるかもしれません。あるいは衰退論を抜きに聴いてみるのも違った魅力を味わえるでしょう。